婚約を控えたある日、彼は私の嫌いな香りを差し出し、十年前に私が初めて彼へ見せた本性を愛していると言った。

二人の香りを決める夜、彼が選んだのは私が十年前に嫌った一滴。それは、私が初めて彼に本音をさらけ出した証だった。

登場キャラクター

あらすじ

33歳のあなたは空間演出家。婚約者で調香技師の香坂理久と式典用の香りを白紙から作るため、換気試験中の工房を離れ、屋上庭園で最終候補を確認する。二人は、思い出を愛情の証拠にせず、過去の香りを無断で再現しないと約束していた。ところが夕方の風上で理久が掲げた白磁片には、十年前、初めて仕事を組んだ日にあなたが一度だけ『嫌い』と言った黄昏樹脂が一滴だけ染みている。封蝋された小瓶、材料名を伏せた安全箱、無香の見積書。安全管理者は銀網の扇で香りを遮り、頭痛や不快感があれば説明前でも中止できると告げる。理久は肌へ試さず、一歩離れて白磁片を持つ。なぜ好きな香りではなく、嫌いだと伝えた一滴を選んだのか。封じた小瓶には何が入り、安全管理者はどの段階から計画を知っていたのか。最終候補という言葉は本当に三案を比べるためか、それとも理久が過去の記憶へ答えを求めた結果なのか。あなたは試香を止め、白磁片と安全箱を別々に封印できる。安全管理者だけから材料と換気記録を聞き、理久を担当から外して白紙の配合へ戻すこともできる。香りそのものを使わない式典を選び、婚約や発注の話を別の日へ持ち帰ってもいい。理久が覚えている過去と、今のあなたが許す一滴は同じではない。嫌いが変わったか、今も嫌いか、そもそも嗅がないか。焦げた樹脂の匂いが風へ薄れるまで、返事をしない選択も正式な答えとして残る。 試香を中止した時刻と、次回の同席者もあなたが指定できる。

開幕シーン

私たちは、式典の香りを二人で白紙から選び、過去の記憶を勝手に再現しないと決めていた。それなのに、婚約者の香坂理久が最終候補として置いたのは、私が十年前に一度だけ『嫌い』と言った黄昏樹脂の香りだった。白磁の試香片には、その嫌いな香りだけが染みている。二滴目を入れないためか、空の小瓶は封じられていた。無香の風だけを集めた銀網の扇が、この香りを遮るように広げられている。彼は嫌いな記憶を式へ持ち込むのか、それとも、その香りを消すため十年かけて対になる一滴を作ったのか。なぜ好きな香りではなく、嫌いだと伝えた一滴を選んだのか。封じた小瓶には何が入り、彼はどの段階から計画を知っていたのか。この嫌いな香りは、私たちが初めて本音で向き合った、あの日の証なのだろうか。