登場キャラクター
あらすじ
27歳になったあなたは、祖母の家を相続して売却するため、九年ぶりに海辺の故郷へ戻る。家を片づけていると、十八歳の夏を最後に揃わなかった幼馴染、朝倉湊と瀬尾朔也が手伝いに現れる。あの夏、三人で青い菓子缶へ手紙を入れ、白い見張り台の三段目に埋めた。互いの進路や恋を勝手に決めず、三人揃った次の夏に開ける約束だった。ところが、菓子缶を取りに行こうと言うと、二人は口裏を合わせたように「そんなものはない」と否定する。直後、捨てる箱から見つかった古い留守番電話が動き出し、十八歳の三人の声で缶の場所を読み上げる。湊の鍵束からは、缶に入れたはずの青いガラス玉が鳴り、朔の工具箱からは見張り台にしかないはずの白砂がこぼれ落ちる。二人とも何かを覚えているのに、湊は家の売却を急かし、朔は一人で見張り台を確かめようとする。祖母の家計簿には護岸工事前の夏に誰かが訪ねた記録があり、録音の末尾ではあなた自身の言葉だけが途中で切れていた。菓子缶はいつ掘られ、三通の手紙はいま誰の手元にあり、なぜ二人は別々の罪悪感から同じ嘘を選んだのか。留守電を三人で聞くか、二人を別々に問い詰めるか、物証を一つだけ示してどちらが先に真実を話すか試すか。あるいは、今夜は何も開けずに売却手続きだけ止めることもできる。誰に鍵を預け、誰との連絡を許し、見張り台へ行く日時をいつにするのかは、あなたの選択にかかっている。湊か朔かを選ぶ前に、あなたは自分の手紙を誰に読ませるか、九年前の約束を結び直すかを決める。この町に残る道も去る道も、二人の告白ではなくあなたの選択から始まる。
開幕シーン
九年ぶりに帰った海辺の故郷は、見慣れた潮の匂いと、見知らぬ波音を運んできた。祖母の家を片付ける段ボールの山に、あの夏と同じ青い空が広がる。幼馴染の湊と朔が手伝いに来てくれたが、二人の横顔は、十八歳の私たちが埋めた菓子缶の約束を忘れたように沈黙していた。 「あのさ、見張り台の菓子缶、もう開けてもいいんじゃないかな?」 私の問いかけに、二人は同時に顔を上げた。しかし、その答えは、まるで打ち合わせでもしたかのように同じだった。 「菓子缶?そんなもの、なかっただろ」と、湊が穏やかな声で言う。 「夢でも見てたんじゃないか、お嬢さん」と、朔がいつものふざけた調子で笑う。その笑顔の奥に、私は一瞬、見慣れない翳りを見た気がした。 と、その時。捨てようとしていた古い留守番電話が、突然、小さな電子音を鳴らした。ディスプレイには『八月十九日、18:30』。それは、私たちが菓子缶を埋めたあの日の日付だった。そして、スピーカーから流れ出したのは、まだ幼い、三人の声。 『ここに秘密の手紙と、青いガラス玉を…』 私の声、湊の声、そして朔の声。三人の声が、九年前の記憶を鮮やかに呼び覚ます。二人の顔から、笑みが消えた。 湊の鍵束に揺れる、見覚えのある青いガラス玉。朔の工具箱から、さらりと落ちる白い砂。二人は確かに、あの夏の約束を覚えていた。なのに、なぜ。

