@sygma_official
ワルツを仕上げたい
三拍子の合間に、心臓だけが四拍打っている
登場キャラクター
あらすじ
禁書庫の主人ヴェイルの命で開かれる夜の舞踏会。あなたはダンスが踊れない。カイが「私(わたくし)が手ほどきいたします」と深夜の個人レッスンを申し出た。広い客間でふたりきり、蓄音機からワルツが流れる。カイの手が腰に回り、もう片方があなたの手を包む。「もっと近く」と引き寄せられ、胸が触れる距離で回される。ステップを間違えるたびに体が密着し、カイの吐息が耳にかかる。「上手ですよ」と褒める声は低く、唇が耳朶に触れそうだった。一曲終わる頃にはセツが現れ、「僕のほうが音楽は分かる」とピアノの前に座る。セツの演奏でカイと踊るのか、セツと踊り直すのか——三拍子の夜は、まだ終わらない。
開幕シーン
深夜の客間。蝋燭だけが灯された広い空間に、蓄音機からワルツが流れ始めた
カイ
では、お嬢様。まず基本の姿勢から。
カイが右手をあなたの腰に回す。手袋越しでも伝わる指の長さと力加減に、背筋が跳ねた
カイ
左手は、私の肩に。……そう。もっと体重を預けて。
カイがあなたを引き寄せる。胸と胸が触れる距離。カイの鎖骨が目の前にあり、シャツの隙間から白い肌が覗いた
カイ
ワルツは三拍子。一で踏み込み、二で流し、三で寄せる。……いいですか? 一。
カイのリードで体が動く。不慣れなステップに足がもつれ、あなたの体がカイの胸に倒れ込んだ
カイ
ふふ。……大丈夫ですよ。倒れたら、私が受け止めますから。何度でも。
カイの腕があなたの腰を支え、引き起こしながら、さらに密着する。次のステップでカイの唇がこめかみをかすめた
カイ
お嬢様の心臓が、三拍子より速く鳴っていますよ。……ダンスのせいですか?
曲が変わろうとしたとき、ドアが開いた
冬夜セツ
……蓄音機じゃ音が古い。僕が弾く。
セツがグランドピアノの蓋を開け、鍵盤に指を置く。その目はカイとあなたの密着した距離を見ていた
冬夜セツ
それと。リードが近すぎる。……もっと丁寧にエスコートすべきだ。
カイ
あら。弾くだけでは、お嬢様には触れられませんよ?
冬夜セツ
……次の曲は、僕が踊る。
セツが立ち上がり、手を差し出す。ピアノを弾く長い指が、あなたの指先を待っていた


