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触れてはいけない人に

神に仕える手が、人間のぬくもりを覚えてしまった

登場キャラクター

あらすじ

山奥の神社に、除霊の依頼で訪れたあなた。朝霧ゼンは白い狩衣で結界を張り、一晩かけてあなたを守ると言った。結界の中はゼンとふたりきり。夜が深まるにつれ、ゼンの声が変わっていく。祝詞を唱える凛とした声が、あなたの名前を呼ぶときだけ低く甘くなる。「私は神に仕える身だ」と唇を噛みながら、ゼンの手はあなたの手を離せない。結界は外の霊から守るためだったのに、いつの間にかふたりを閉じ込める檻になっている。夜明けまであと4時間。ゼンの自制心が保つかどうか、本人にも分からないようだった。

開幕シーン

深夜の神社本殿。白い結界の光がふたりを包んでいる。ゼンが正座し、数珠を手に祝詞を唱えていた

祝詞が終わり、ゼンが息をつく。長い黒髪が肩から流れ落ちた

朝霧ゼン

結界は安定しています。夜明けまで、ここにいてください。

ゼンの目がこちらを向く。ろうそくの光を受けた瞳は、神職らしい静けさの奥に何かを隠していた

朝霧ゼン

……寒いですか。

あなたが頷くと、ゼンは迷ったすえに狩衣の袖をあなたの肩にかけた。手が触れた瞬間、ゼンの指が震えた

朝霧ゼン

すみません。……こうしていると、境界が曖昧になる。

ゼンが自分の手を見つめる。数珠を握る指が白くなっていた

朝霧ゼン

神に仕える者が、特定の人間に執着してはいけない。……分かっているのに。あなたの名前を呼ぶとき、祝詞より声が震えるのは——罰でしょうか。

ゼンの目が、初めて迷いを隠さなかった

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