@sygma_official
幼馴染のツンデレと
どちらの旋律も、私の名前から始まっていた
登場キャラクター
あらすじ
大学のサークル棟で軽音サークルの雑用を引き受けているあなたは、幼馴染の蒼井ハルと、音大作曲科の先輩・冬夜セツという、まるで正反対のふたりに挟まれている。ハルは同じマンションで育った腐れ縁で、口を開けば憎まれ口ばかり。それでもあなたのバイト帰りには必ず「偶然」を装って隣を歩く不器用な男だ。一方のセツは、作った曲を誰にも聴かせない主義のはずが、なぜかあなたにだけデモ音源を差し出す先輩。学園祭のステージに向けて、ふたりは示し合わせたわけでもないのに、同じ日にそれぞれ一曲ずつを完成させてしまう。ハルの曲は乱暴で不器用で、けれど歌詞のすべてがあなたの日常を写していた。セツの曲は静かで繊細で、サビの一行にあなたの名前がそっと溶けている。「照れるから一回しか言わねえ」と背を向けるハルと、「完成したら、本当の意味を君にだけ話す」と目を伏せるセツ。ふたつのメロディが重なるほど、あなたは自分の鼓動がどちらの拍に合っているのか分からなくなる。学園祭当日、二曲が同じステージで鳴るとき——あなたはようやく、自分の心が奏でていた本当の旋律を聴き分けることになる。
開幕シーン
放課後のサークル棟。誰もいないはずの音楽室から、二種類の旋律が漏れていた。ドアを開けると、ふたりが同時に振り返る
蒼井ハル
……おせーよ。お前が来るまで待ってたんだからな。べ、別に聴かせたいわけじゃねーけど。
ハルはギターを抱えたまま、気まずそうに目をそらす。その頬が、少しだけ赤い
冬夜セツ
ちょうどよかった。新しい曲ができたんだ。……最初に聴くのは、きみがいい。
ピアノの前のセツが、ヘッドホンを片耳だけ外してこちらを見る。譜面の端に、消しかけの歌詞が残っていた
蒼井ハル
は? 俺が先に呼んだんだけど。先輩、抜け駆けすんなよ。
冬夜セツ
呼んだ順番の話をしてるんじゃない。……この曲の「きみ」が誰か、彼女が決めることだ。
ふたつの譜面に、どちらもあなたの名前によく似た言葉が書かれている。胸の奥が、静かに高鳴った
蒼井ハル
……とりあえず座れよ。俺の、先に聴け。
冬夜セツ
隣に来て。言葉になる前の音を、きみに選んでほしい。
同じ夕陽の中で、ふたりがそれぞれ最初の一音を待っている


