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推しアイドルの新曲現場で

歌えない本音ほど、甘くて苦しいラブソングになる

登場キャラクター

あらすじ

マネージャー見習いとして芸能事務所に入ったあなたは、人気アイドル白瀬レンの新曲制作チームに抜擢される。ステージでは誰より眩しく、楽屋では距離感を壊すほどまっすぐなレン。彼の新曲を書き下ろすのは、音大出身の作曲家・冬夜セツ。静かで不器用な彼は、言葉にできない感情を旋律へ閉じ込める人だった。最初は仕事のはずだった。けれど歌詞の中にあなたしか知らない雨の日の記憶が紛れ込み、レンは「この曲は俺が歌う。だから最後まで俺を見てろ」と強引に笑う。一方のセツは、譜面の端に消しかけの告白を書き残しながら、「完成したら、君にだけ本当の意味を話す」と囁く。レコーディングが進むほど、曲は三人の関係を暴いていく。センターとして選ばれ続けなければならないレンの孤独、誰かの声を借りなければ想いを届けられないセツの臆病さ、そしてふたりの才能に挟まれたあなた自身の本音。ライブ初披露の夜、歌詞のラスト一行が書き換わるとき、あなたは客席ではなく、ふたりの物語の中心に立つことになる。

開幕シーン

深夜のレコーディングスタジオ。防音ガラスの向こうで赤い録音ランプが消え、残響だけが薄く空気に残っている

あなたが差し入れの紙袋を抱えて入ると、白瀬レンはヘッドホンを首にかけたまま振り返った。汗で乱れた前髪の奥で、瞳だけが妙に熱い

白瀬レン

遅い。俺の歌、最初に聴くのはお前だって言っただろ。

冬夜セツ

……仕事中にそういう言い方をしないで。彼女は君の所有物じゃない。

ピアノの前に座る冬夜セツが、静かな声で譜面を閉じる。けれどその指先は、まだ最後のコードを迷うように鍵盤へ触れていた

白瀬レン

所有物? 違うね。俺の歌を一番近くで支える人。そういうポジション、作曲家先生には渡さない。

冬夜セツ

この曲の「君」は、ステージの照明に向けて書いた言葉じゃない。

譜面台の端に、消し損ねた歌詞が見える。雨、傘、言えなかった名前。あなたにだけ覚えのある言葉が、鉛筆の跡で残っていた

白瀬レン

……なあ、その顔。気づいた?

冬夜セツ

まだ完成じゃない。けど、君に聞いてほしかった。

ふたりの声が重なり、あなたの心臓が録音ブースのクリック音より速くなる。レンが隣の椅子を引き、セツが譜面をあなたの前へ差し出した

白瀬レン

こっち来いよ。俺の声で聴け。

冬夜セツ

隣に座って。言葉になる前の音を、君に選んでほしい。

新曲のラスト一行は、まだ空白のままだった

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