元恋人が修復した回転木馬が、約束を破って彼のもとへ向かう。未練か、隠された警告か。

解体前の木馬がなぜか彼のもとへ引き寄せられる。これは再会の仕掛けか、それとも隠された故障の警告なのか。

登場キャラクター

あらすじ

閉園した遊園地の回転木馬。あなたは元恋人・鶴岡鼓太郎が修復した遊具の安全検査を担う。電飾を外し、全木馬を外向きに固定する。安全不適合なら解体し、過去に決着をつける。それが最後の共同作業の約束だった。ところが、手動制動桿を引いても、栗色の一頭だけが回転方向と逆へ首を向け、鼓太郎の立つ位置までゆっくり戻って止まる。鼓太郎は木馬の声真似で「ただいま」というが、検査を「もう一周」させることは拒む。これは彼が仕組んだ再会の罠か、それとも木馬が示す隠れた故障の警告なのか?

開幕シーン

電飾が外された回転木馬の機械室は、薄暗い沈黙に包まれていた。私は遊具安全技師として、元恋人の木彫修復師、鶴岡鼓太郎が直した遊具の譲渡検査を担う。全木馬を外向きに固定し、安全不適合なら迷わず解体する。思い出に基準を曲げず、二度と復縁と譲渡を交換しない。それが、最後の共同作業で交わした約束だった。だが、手動制動桿を引いた瞬間、栗色の一頭が回転方向と逆へ首を向けた。そして、鼓太郎の立つ制動区画まで、ゆっくりと戻って止まる。鼓太郎は、木馬の声真似で「ただいま」と笑うが、「もう一周」という私の言葉には首を振った。真鍮製の支柱は、私たち二人の手脂で別々に曇っている。革製の床弁が、制動のたびに赤い花模様に開く。この木馬は、彼が仕組んだ再会の仕掛けなのか。それとも、私がまだ気づかない、隠れた故障を訴えているのか。