水門を変えて届く同じ鳥笛のひびは、元恋人の潜水整備士が送る救難合図か。

別の水門から回収される同じ鳥笛は、毎朝ひびだけ一筋増えている。

登場キャラクター

あらすじ

31歳のあなたは市内運河の遺失物担当。回収品は一度だけ封入し、潜水整備士が同じ物を繰り返し持ち込まない規則だ。なのに元恋人の黒瀬篤紀は三朝連続で、同じ欠けと窯印を持つ乳白の陶製鳥笛を差し出す。初日は第五水門、次は第四、今朝は第三水門。翼のひびだけが毎朝一本ずつ増え、回収籠には上流にしかない藻糸が下流側へ逆巻きし、水門番号の形へ削れた黄色い蝋片が残る。一つの笛が流れを遡っているように見える。篤紀は笛を吹いておらず、夜の水門から二短一長の音を聞いたとだけ話す。その音はかつてあなたが潜水現場で使った救難合図に似ているが、誰かの危険を示す記録はない。三つはよく似た複製なのか、ひびを増やした同じ笛なのか。藻糸と蝋片は流れを示すのか、保守作業で籠へ付いたのか。篤紀はなぜ夜の行動を伏せ、救難音をあなたへ結び付けたのか。彼の行動の真意と、鳥笛に隠されたメッセージを解き明かす運河ミステリー。

開幕シーン

毎朝、私の心臓は不穏な音を立てる。市内運河の遺失物担当として、回収品は一度だけ封入し、同じものを繰り返し持ち込まないのが規則だ。しかし、この三日間、元恋人の潜水整備士、黒瀬篤紀は、別の水門から同じ陶製の鳥笛を届けている。初日は第五水門、次は第四、今朝は第三水門。乳白色の翼には、毎朝一本ずつ新しいひびが増え、回収籠には上流にしかない藻糸が下流側へ逆巻きし、水門番号の形に削れた黄色い蝋片が残されていた。まるで、一つの笛が水流を逆行しているかのように。篤紀は笛を吹かず、ただ「夜の水門で、二短一長の音が聞こえた」とだけ告げる。それは、かつて私が潜水現場で使った救難合図に酷似していた。彼の疲れた瞳の奥に、一体何が隠されているのだろう。