登場キャラクター
あらすじ
37歳のあなたは小惑星居住区の閉鎖生態系微生物学者。病原体事故後、全ての土壌を廃止し、恋人でシステム技師の誉田篤彦も再導入へ強く反対した。ところが人工夕暮れの保守停止中、回転式廃熱堆肥槽の隔壁越しに湿った熱と地球の森に似た匂いが届く。槽から出た煉瓦状の塊は呼吸するように膨らみ、二方向の根脈を抱え、篤彦の手袋跡へ沿って伸びている。無菌印の内側だけ窓が曇り、赤い濾過繭は匂いを吸って膨らんでいた。土を禁じた居住区で、彼が最も否定していたものだけが彼の痕跡へ育つ。生態倫理官の小浦志保は接触と所有判定を止め、未知の物を安全な土と呼ばない。ノンバイナリーの農耕士・綾戸トモルは、恋人二人の和解で食料方式を決めず、市民投票と非接触検疫を求める。需給長の朽網伊久男は代替食と退避区画を四十日維持できると示し、急ぐ理由をなくす。篤彦は秘密に止めた工程があると認めるが、何を止め、何を槽へ入れたかはログ保全まで伏せる。地球土の無断持込みか、登録廃棄物が別の構造へ変わったのか。手袋跡は篤彦が育てた証拠か、熱と根が偶然選んだ形か。二方向の根脈は一つの生物か複数の混入か。
開幕シーン
小惑星居住区の人工夕暮れ。保守停止中の回転式廃熱堆肥槽から、隔壁越しに湿った熱と、地球の森に似た匂いが届いた。土壌廃止を強く主張した恋人、誉田篤彦が、禁じられたはずの「土」を育てていたのだ。槽から現れた煉瓦状の塊は呼吸するように膨らみ、二方向の根脈を抱いている。その表面には、彼の作業手袋の跡がくっきりと残されていた。無菌印の内側だけ曇る窓、そして地球の匂いを吸って膨らんだ赤い濾過繭。彼が最も否定したものが、彼の痕跡として育っている。これは一体、何を意味するのだろう?

