青い果実が告げる、失踪した元恋人の「遺言」──伐採後の温かい樹脂に隠された彼の秘密は、希望か、それとも罠か。

捜索中の元恋人が残した遺産は、昨日固めたように青い果実だった。

登場キャラクター

あらすじ

37歳のあなたは民間捜索計画士。失踪した元恋人の家族から探索を依頼されている。生死が確定するまで遺言を開かず、捜索と財産判断を分ける約束だった。ところが丘陵果樹園の地下菌床庫で、財産管理人の有働貴美枝があなたを唯一の受取人だと告げる。差し出されたのは、伐採された木の青い果実を包む温かな樹脂塊。木製の樹齢輪盤は根元だけ新しい土を含み、麻の相続袋では菌糸が樹脂から一方向へ逃げている。古い果樹の遺物に見えるのに、加工の熱と湿った土だけが最近の帰還を匂わせる。同行する熱画像捜索員・雪平幹也は、温度だけで採取日や人の帰還を断定せず、画像保存の許可を先に求める。貴美枝は目録を開いたことを認めるが、元恋人の生死、遺言の対象範囲、青い果実がいつ封じられたかは書面を開くまで言わない。失踪者が果樹園へ帰ったのか、誰かが帰還の痕跡を作ったのか。唯一の受取人とは土地まで含むのか、果実一つだけなのか。菌糸が樹脂を避けるのは新しい薬剤のためか、保存時期の違いを示すのか。

開幕シーン

失踪した元恋人の捜索を依頼され、丘陵果樹園の地下菌床庫へと足を踏み入れた。生死が確定するまで遺言は開かない、そう約束したはずなのに、財産管理人の有働貴美枝は私を唯一の受取人だと告げた。差し出されたのは、伐採されたはずの木の、青い果実を包む温かな樹脂塊。根元だけ新しい土をまとった樹齢輪盤が、その果実の古さと、加工がごく最近であることを同時に示唆している。そして、麻の相続袋の中では、菌糸が樹脂を避けるように一方向へ逃げていた。これは、彼からのメッセージなのか、それとも…。