登場キャラクター
あらすじ
39歳のあなたは動物行動相談員。共有物も共同責任も残さず離婚した一か月後、雷で長期里親宅が損傷した引退捜索犬の緊急引渡しへ呼ばれます。感覚調整室へ入ると、元配偶者で捜索犬指導員の真砂智暁も同じ通知を持っていた。互いを引退先へ指定しない約束だったのに、緊急里親票には二人の連絡先が並び、犬はどちらかへ駆け寄らず、二人の担当色で縫ったハーネスを着けたまま靴の間に伏せる。雷が鳴るたび発泡扉止めの噛み跡が増え、厚手毛布の両面から別々の生活臭が立っていた。犬の安心と、終えたはずの共同生活が同じ部屋へ戻される。智暁は自分も通知へ驚いたと言い、犬を復縁の票にしないと約束する。施設コーディネーターの野辺地絹江は、里親票の作成経路と連絡区分を調べるまで、誰が二人を残したか断定しない。二色のハーネスは智暁が用意した再同居の演出か、過去の訓練品がそのまま使われただけか。毛布の二つの匂いは実際の生活痕か、犬の反応を見るため誰かが移したものか。犬が靴の間へ伏せた行動にも、関係を選ぶ意味を勝手に与えられない。
開幕シーン
乾いた通知の紙を握りしめ、あなたは感覚調整室のドアを開けた。離婚から一ヶ月、共有財産も共同責任も残さずきっぱりと別れたはずなのに、そこにいたのは元夫、真砂智暁。引退捜索犬の緊急里親として呼ばれたのは、私たち二人だった。雷の音に怯える犬は、どちらか一方を選ぶことなく、二人の靴の間にそっと伏せる。その首には、私と彼、それぞれの担当色で縫い分けられたはずのハーネス。
