登場キャラクター
あらすじ
手の筋力低下に合わせた退院後の働き方を探す飲食店接客責任者のあなたは、成人リハビリ滞在棟の共同厨房で退院祝いを迎える。店の再開宣言にせず、自分が選んだ一皿を自分の速度で完成させる約束だった。しかし、恋人で料理人の生方善紀は、あなたが店に戻らないと決めた後なのに、店の看板料理を最後の課題として置いた。皿にはあなたの指形に合う溝があり、握らず押すだけで回る。料理名を消して食感だけ描いた布敷きと、軽い器具ほど下段に並ぶ傾斜棚は、復職試験にも別の働き方にも見えた。この皿は復職を期待する圧力なのか、それともあなた抜きでも店を分業運営するための試作なのか? 愛と仕事の狭間で、あなたは新たな一歩を踏み出す。
開幕シーン
共同厨房に漂う、甘く香ばしい匂い。それは、かつて私が店で最も愛した、看板料理の香りだった。退院祝い。けれど、私の心は晴れやかではなかった。店の接客責任者として、手の筋力低下という現実を前に、私は店へ戻らないと決めた。自分の速度で、自分が選んだ一皿を完成させる。それが、恋人である生方善紀との約束だったはずだ。 私の目の前には、白く美しい石器の皿。その縁には、私の指形に合わせたかのような溝が彫られている。握らず、ただ押すだけで回るという。皿の下に敷かれた布には、料理名ではなく、食感だけが描かれている。そして、軽く扱える器具ほど下段に並べられた傾斜棚。これらは、まるで私を元の職場へ引き戻そうとする復職試験のようだ。けれど、同時に、私抜きでも店を回せる分業の試作にも見える。善紀は、優しい笑顔で私の隣に立っている。その眼差しは、期待か、それとも隠された依存か。彼の差し出す看板料理は、私にとって最後の課題なのか、それとも新しい未来への招待状なのか。
