最終トラムで元彼が無断で育てた蔓。二席形は同居の誘いか、秘密の公共計画か。

別々に引っ越すはずの夜、彼は二人の席へ育った蔓を最終便に乗せた。

登場キャラクター

あらすじ

都市植物管理士であるあなたは、元恋人・笠松晴親と共有していた希少な銀緑蔓を、別居後は専門施設へ預けると決めていた。植物を復縁の人質にしないためだ。しかし夜11時、車庫へ向かう環状トラムの最終周回に乗ると、蔓は向かい合う二席へ沿う形で枝を伸ばし、行先表示を大きな新葉で隠していた。楕円の鉢受けには全二十二停留所の色粉が薄く重なり、晴親は「乗客一名、終点未定」と笑う。予定された移植先ではなく、二人の昔の距離を再現するような車内へ蔓が運ばれていた。彼は同居へ戻る演出をしたのか、それとも別の公共温室計画を隠していたのか? 最終便が告げる秘密と、あなたの選択が問われる。

開幕シーン

夜11時。環状トラムの最終便は、昼間の喧騒とは打って変わって静まり返っていた。このトラムが車庫へ向かうだけの、単なる最終周回のはずだった。私の目の前には、見慣れた銀緑の蔓。けれど、その姿は私の記憶とはかけ離れていた。向かい合う二席の背に沿うように枝を伸ばし、まるで二人を囲むように育っている。行先表示は、その大きな新葉で完全に隠されていた。鉢受けには、全二十二停留所の色とりどりの粉塵が薄く重なり、旅の痕跡を物語っている。笠松晴親は、私の視線に気づくと、「乗客一名、終点未定」と、いつものように植物へ語りかけるように言った。けれど、その声はどこか固く、私の目を避けている。専門施設へ預けるはずだった蔓が、なぜ、こんな形でここに? そしてこの「二席形」は、何を意味するのだろうか。