登場キャラクター
あらすじ
高架下夜市の出店者代表として、あなたは日没までに屋台三十軒を新広場へ移す大仕事を指揮している。公開抽選の順を守り、自分自身も特別扱いしないと約束したはずだった。しかし、午後の点呼で元恋人である車輪整備士の椿原勇馬が、あなたの屋台だけを勝手に押し出しているのを目撃する。新しい区画番号が刻まれた楔形の車輪止めが既に車輪に噛み、油の移動跡はあなたの屋台幅だけ不自然に途切れ、旧区画の沈みには赤紫色の天幕留めが挟まっていた。勇馬は「一軒目、救出完了!」と笑うが、抽選札には目を向けない。彼はあなたへの未練で優先したのか、それとも旧区画の異常を先に察知していたのか? 沈んだ天幕留めは単なる路面の割れか、それとも地下へと続く空洞の入り口なのか? 夜市の安全とあなたの心は、危険と秘密の狭間で揺れ動く。
開幕シーン
日没まであと三時間。広場に響く活気ある掛け声とは裏腹に、私の心は凍りついたままだった。公開抽選で決まった移転順を、彼は破った。それも、私の屋台だけを。新しい区画番号が彫られた楔形の車輪止めが、私の屋台の車輪にしっかりと噛み込んでいる。路面には、他の屋台の移動跡とは明らかに違う、私の屋台の幅だけ途切れた油の跡が。そして、旧区画の沈み込んだアスファルトの隙間には、見覚えのある赤紫色の天幕留めが挟まっていた。まさか、と息をのむ。抽選前の番号、安全確認前の移動。二つの違反が、日没前の広場に、いや、私の目の前に突きつけられる。 椿原勇馬は、私の視線に気づくと、いつもの調子で「一軒目、救出完了!」と笑いかけた。けれど、その目は抽選札には一度も向けられなかった。彼の額には、いつもより深い皺が刻まれている。救出? 何から? 胸騒ぎが止まらない。
