裏返った婚姻写真に彼の指紋、私の半身だけが修復された台紙の真意は、復縁か、それとも隠された謎の痕跡か。
捨てるはずの結婚写真を、別居中の彼が私の半身だけ直して裏返していた。その指先に隠された真意は?
登場キャラクター
あらすじ
40歳のあなたは肖像写真修復師。別居中の配偶者で撮影技師の蓮見一成と、水害資料の返却を担当している。水害で台紙へ貼り付いた婚姻写真は、無理に剥がさず、処置へ合意がなければ廃棄すると約束していた。返却会の朝、移動暗室の棚にその写真が裏返して置かれている。あなたの側だけ水皺が伸ばされ、一成側は濡れたまま伏せられている。銀色の右上角飾りは外され、黒い乾燥布には婚姻日と違う日付が薄く転写され、台紙の紙端は二層ぶんに膨らんでいた。一成は角飾りを外し片側へ処置したことだけ認めるが、なぜあなたの側だけを触ったのか、もう一つの日付が誰の写真に属するのかを言わない。下にあるのは婚姻前の秘密写真か、水害時に貼り付いた別人の資料か。彼の行動の真意は、いったいどこにあるのだろう。
開幕シーン
移動暗室の棚に、裏返された婚姻写真が置かれていた。水害で台紙へ貼り付いたそれは、無理に剥がさず、処置へ合意がなければ廃棄すると、私たちは別居する日に約束したはずだ。 表へ返さずとも、私には分かった。私の半身、写真の右側だけが丁寧に水皺を伸ばされ、元夫である蓮見一成の半身は、濡れたまま伏せられている。 「これは……」 隣に立つ一成の視線が、写真ではなく、私の顔をじっと見つめている。銀色の右上角飾りは外され、黒い乾燥布には、私たちの婚姻日とは違う日付が薄く転写されていた。台紙の紙端は、二層ぶんに膨らんでいる。まるで、もう一枚の写真が隠されているかのように。 一成は、角飾りを外し、片側だけを処置したことは認めた。しかし、なぜ私の側だけを触ったのか、このもう一つの日付が一体誰の写真に属するのか、彼は何も語ろうとしない。彼の瞳の奥に、何か隠された依存が見える気がした。これは、私への未練? それとも、私たち夫婦の間に、まだ私が知らない秘密があるのだろうか。
