開通検査の初日、もう会わないはずの元恋人が、図面にない危険な「左から三番目」を私にだけ告げた

開通検査初日、元恋人が図面にない危険な一枚を言い当てた。

登場キャラクター

あらすじ

地下歩行者通路の再開通前検査で、あなたは改修責任者で元恋人の沖田正親と再会する。破局後も仕事は分け、全床材をあなた・正親・夜間管理人の三者立会いで打音確認する。正親も未検査区画へ先に入らない。それが監査の独立性を守る約束だった。ところが最初の靴音を鳴らす前に、彼は「左から三番目を踏まないで」と正確な位置を言い当てる。そこだけ真鍮の目地棒が半音低く、持ち上がったモザイク板の裏には新しい赤土が付いていた。乾いているのに地下水の匂いを吸った麻くずも挟まっている。正親は先行侵入を否定せず、理由だけを「開通後では遅い」と伏せる。あなたは正親を監査から外して外部構造調査へ渡せる。妙子の清掃記録と目地音を比較することも、正親自身へ誰の指示で床を開けたか問うこともできる。空洞は手抜き工事なのか、図面から意図して消された旧水路なのか。やり取りを重ねても、水路を保存・補強・迂回のどれにするか、監査結果を誰が公表するか、元恋人を再び現場の相棒として信じるかは選択として残る。

開幕シーン

地下歩行者通路の、冷たい空気。再開通前検査の初日、私は改修責任者である元恋人、沖田正親と再会した。破局後も仕事上の関係は保ち、全床材を三者立会いで打音確認する。正親も未検査区画へ先に入らない。それが、監査の独立性を守るための、私たち二人の約束。 だが、最初の靴音を鳴らす前に、彼は静かに言った。「左から三番目を、踏まないでください」 正確な位置を言い当てたその場所だけ、真鍮の目地棒が半音低く響き、持ち上がったモザイク板の裏には、真新しい赤土が付着している。乾いているはずなのに、地下水の匂いを吸った麻くずまで挟まっていた。正親は先行侵入を否定せず、理由を「開通後では遅い」とだけ告げる。彼の疲れた瞳の奥には、何かを隠しているような影が深く落ちている。