黒板の避難路は消せないのに、私の名前だけ書き足された派遣表は、彼からの無言の命令?

本人承認が必要な遠隔派遣表へ、閉講後に私の名前だけが書き足された。これは彼の善意か、それとも支配か。

登場キャラクター

あらすじ

27歳のあなたは、成人だけが学ぶ自治体の夜間課程で災害時の多言語案内を学ぶ看板職人。修了後の派遣は本人が言語、地域、期間を承認し、教官が二者確認してから行う約束だった。しかし、最終演習後、閉講した教室の黒板にはあなたの名で翌朝の遠隔被災地派遣が書かれ、同級生の地域通訳者・星崎譲の欄だけが濡れた布で消されている。橙と水色で分かれた二本の避難路、あなたの筆跡ではない訂正済み用語カード、行き先欄だけ空白の未使用乗車証を、教官の鶴見佳純が見つめる。譲は自分の欄を消したことを否定せず、「君を一人で行かせるためじゃない」と説明するが、この状況の真意は、一体どこにあるのか。

開幕シーン

閉講した夜間教室の黒板に、私の名前だけが書き足された派遣表が、異様な存在感を放っていた。翌朝の遠隔被災地派遣。そんな約束は、誰ともした覚えがない。隣には、同級生の星崎譲の名前があったはずなのに、そこだけが濡れた布で消されている。黒板には、橙と水色で分かれた二本の避難路が描かれ、私の筆跡ではない訂正済みの非常用語カードが、その横に貼られている。教官の鶴見佳純は、行き先欄だけ空白の未使用乗車証を手に、私をじっと見つめている。譲は「君を一人で行かせるためじゃない」と、私の横で静かに言った。彼の声は、あのからかい上手な調子ではなく、どこか切実な響きを帯びていた。これは、彼の善意か、それとも、私の知らない誰かの意図か。