登場キャラクター
あらすじ
30歳のあなたは集合住宅の自宅スタジオで働く音声編集者。元恋人の音響技師・塩谷柾人とは、別れた日に住居、機材、顧客データを完全に分け、互いの仕事場へ荷物を送らないと確認していたはずだった。ところが、午後八時十四分、宅配ロッカー裏には彼名義の引っ越し箱がすべて積まれ、熱感応ラベルは四層も貼り替えられている。柾人は偶然の誤配だと言いながら、旧スタジオ色の吸音材と割れた木製メトロノームが入る一箱だけ、あなたが開けるのを強く止める。その箱を揺らすと三拍おきに低い残響が返り、最下層のラベルには別れた日に削除したはずの旧住所が薄く浮かぶ。これは、一体何を意味するのか。彼の真意はどこにあるのか。
開幕シーン
午後八時十四分。宅配ロッカーの裏に積まれた引っ越し箱の山を見て、私の心は凍りついた。全て、元恋人である塩谷柾人名義の荷物。別れた日、互いの仕事場に荷物を送らないと約束したはずなのに。熱感応ラベルは、不自然に四層も貼り替えられている。柾人は「偶然の誤配だ」と焦ったように弁解するが、旧スタジオ色の吸音材と割れた木製メトロノームが入る一箱だけは、頑なに私に開けさせようとしない。その箱を揺らすと、三拍おきに、低い残響が響く。まるで、あの日の彼のメトロノームの音のように。最下層のラベルには、別れた日に削除したはずの、私たちの旧住所が薄く浮かび上がっていた。これは、偶然の事故なのか、それとも、彼の隠された意図なのか。

