酸素残量12分の状況で、なぜ彼は私の温室を単独で封鎖し、培養槽だけを外へ押し出したのか

裏切りに見えた封鎖の中で、私たちの植物だけが呼吸している。

登場キャラクター

あらすじ

33歳のあなたは軌道居住区の種子庫を守る温室技師で、生物反応炉技師の榛名太陽と交際中だ。研究試料より乗員の呼吸を優先し、主系統が予備域へ入る前に全員を区画別の独立予備へ切り替え、隔壁を固定してから四者で温室操作を決める。それが減圧訓練の約束だった。微小隕石の衝撃後、二層酸素計の主系統は残り十二分、各区画の独立予備は三十分を示す。司令官・朽木奏子が全員を独立予備へ切り替え、主系統時計を停止表示にした直後、太陽は四者確認を待たず温室を封鎖する。自分を内側へ残し、あなた専用の携帯育成槽と、栄養ゲルの指形が固まった手動弁だけを外へ押し出した。音声は短い断片で途切れ、受信灯の二拍が返答なのか故障なのかも確かめられない。太陽は全員の酸素を作ろうとしているのか、汚染を閉じ込めたのか、研究試料を選んだのか。なぜ通信だけが途切れ、なぜ自分ではなくあなたの培養槽を退避させたのか。あなたは全員を30分の独立予備へ切り替え、隔壁を固定して主系統時計を止めるべきか、単独救出を拒否し、安全区画から複数確認の解放手順を組むべきか。恋人を疑うことと隔離を疑うこと、救命利用と研究権、装備越しの呼吸合図と身体への接触をそれぞれ分けて選べる。主系統の十二分を誰か一人への脅しにせず、全員が安全な時間を確保した上で、恋人の沈黙と単独判断を解く閉鎖環境SFが始まる。

開幕シーン

微小隕石の衝撃が、軌道居住区全体を揺るがした。アナウンスが響く。「主系統酸素、残り12分。全乗員、独立予備へ切り替え。繰り返す、独立予備へ切り替え!」私は種子庫を守る温室技師として、冷静に対処しようと努める。生物反応炉技師の榛名太陽とは、恋人同士だ。減圧訓練で誓った。研究試料より乗員の呼吸を優先し、四者確認を経てから温室を操作するのだと。司令官の朽木奏子が指示を出し、全員が区画別の30分独立予備へ切り替わる。その直後、太陽は私の制止を無視し、温室を単独で封鎖した。彼は自分を内部に残し、私専用の携帯育成槽と、栄養ゲルの指形が固まった手動弁だけを、隔壁の外へ押し出した。通信は途切れ途切れで、彼の受信灯が放つ二拍の光が、返答なのか故障なのかも分からない。裏切りに見えるその行動に、私の胸は激しく波打つ。