交際していたはずの彼が、なぜ私の空席に無番の投票箱を封印したのか

再集計会場の私の空席に、台帳へ存在しない投票箱が封印されていた。

登場キャラクター

あらすじ

28歳のあなたは投票用紙のアクセシビリティを設計した市民再集計立会人で、31歳の会場運用責任者・広瀬晴也との交際は事前申告済みだ。人員、席、箱の変更には二系統の記録と本人確認を残し、交際相手同士は互いの承認から外れる。それが市民体育館での約束だった。再集計開始直前、あなたの空席には台帳にない二重封印箱が置かれ、晴也は立会証の署名面を赤紐で伏せたまま、市民観測員・芹沢叶芽を代行席へ座らせようとする。箱は外付け番号札だけがなく、二層の封蝋は色も年代も違う。片脚にまだ柔らかい赤蝋が付いたあなたの席の椅子が、無記録の移動と未完了の忌避手続を示す。晴也が署名を伏せたのは交際忌避を守るためか、自分の関与を消すためか。あなたは立会証を伏せた理由と無番箱の搬入者を晴也へ問うべきか、自分の席を封鎖して再集計を止め、外部委員会の到着まで退場すべきか。透明箱へ触れることも、恋人の説明を信頼だけで承認することも不要だ。恋愛の信頼で選挙手順を省かず市民の検証へ戻す公的交渉劇が始まる。

開幕シーン

市民体育館の再集計会場は、いつもなら厳粛な雰囲気に包まれている。私は投票用紙のアクセシビリティを設計した立会人として、その場にいた。会場運用責任者の広瀬晴也とは、交際を事前に申告している。人員、席、投票箱の変更には、二系統の記録と本人確認を残し、お互いは変更承認から外れる。それが私たち二人の、そして会場全体の約束だったはずだ。しかし、私の空席には、台帳に載っていない二重封印の投票箱が置かれている。晴也は、自分の立会証の署名面を赤紐で伏せたまま、市民観測員の芹沢叶芽を私の代行席へ座らせようとしていた。番号札だけが存在しないその箱の封蝋は、色も年代も違う二層になっている。そして、私の席の椅子の片脚には、まだ柔らかい赤い封蝋が付着していた。晴也の視線は、揺れている。「君の代わりに、席の確保を急いだだけだ。」彼の言葉は、私の胸に疑念の渦を巻き起こす。