元恋人の元に戻るつもりはなかったのに、あなたの帰宅映像だけ3分遅くされた理由を問う

私のアリバイを守る三分間に、元恋人の声だけ残っていた。

登場キャラクター

あらすじ

26歳のあなたは集合住宅の管理組合会計を担い、33歳の夜間管理人・奥津恭平とは以前交際していた。住民映像は無編集で保存し、時刻補正も閲覧も即日報告する。それが二人を含む管理組合の約束だったはずだ。火災警報後の午前3時03分、あなたの帰宅映像だけが三分遅く表示される。手元の駐車精算券は映像より三分進み、入口カメラの筐体は熱で片側だけ歪む。さらに独立時計を持つ火災インターホンには、恭平が昔の呼び名であなたへ応答した音声が残るのに、管理組合へ提出された事故資料にはその音声欄だけがない。恭平は映像を編集していないと言い、『三分のずれと呼び名は別の問題だ』と切り分けようとする。あなたは映像閲覧を停止して原本だけ封印し、精算券と警報時計から独立した時系列を作成する必要がある。インターホン通話も元恋人との個別説明もいつでも切ってよい。交際の再開と公開範囲も未決のまま、アリバイと私生活のどちらも監視装置へ明け渡さない小規模ミステリーが幕を開ける。

開幕シーン

深夜の火災警報は、いつもなら静かな集合住宅を騒がしくする出来事だった。管理組合会計を担当する私は、すぐに確認に向かう。そこで見たのは、信じられない光景だった。防犯カメラの映像には、私が帰宅する姿が映し出されている。しかし、表示されている時刻は、私の腕時計よりも3分も遅れていた。手元に残る駐車精算券は、映像よりも正確に3分進んでいる。入口カメラの筐体は、熱で片側だけ奇妙に歪んでいた。そして何よりも私を動揺させたのは、火災インターホンに残された、元恋人である夜間管理人、奥津恭平の声だ。彼はそこで、昔私を呼んだ愛称で応答していた。あの声が、事故資料からはきれいに消されている。恭平は言う。「映像自体は編集していません。それに、あの3分のずれと、あの呼び方は別の問題ですよ。」彼の言葉は、まるで私から追及の焦点をずらそうとしているかのようだった。