復帰初日、元恋人の部下が私の廃止済み手順で脚を痛めた鶴を放鳥列へ移す。
退職したはずの私が上司として戻った日、元恋人の部下が、私の旧い手順で傷ついた鶴を放鳥列へ。彼の沈黙は、私への未練か、それとも隠された真実の合図?
登場キャラクター
あらすじ
37歳のあなたは、都市湿地の改変に異議を唱えて一度退職した渡り鳥生息地設計士。寄付者の圧力を再調査するため、放鳥判定の臨時責任者として復帰する。元恋人の回復飼育員・早瀬凌平は今や部下で、私的関係を査定へ使わず、鳥の健康と生息地データが揃うまで単独で放鳥列へ移さないと約束していた。ところが夜明け前、凌平は脚を痛めた鶴を、あなたの廃止済み手順番号が付いた第一待機ケージへ移している。割れた足環、羽根が逆向きに絡む小型風向計、中央から裂けた竹の止まり木。野生動物獣医の石蕗夏彦は鶴を放鳥不適合と判定し、触れず隔離へ戻せる誘導路を開く。凌平は旧手順ならここで二者判定を呼べると言い、封印ねじの新しい風向計と『八十一日』だけが表紙に書かれた記録束を差し出す。なぜ彼は相談せず鶴を移し、廃止された手順を使ったのか。風向計は故障したのか、意図的に向きを変えられたのか。八十一日分の記録には鳥の健康、生息地、寄付者の指示のどこまでが残っているのか。あなたが退職した後、第一ケージを素通りする現行手順を誰が決めたのか。ユーザーは初命令として放鳥停止を出せる。奈津と鶴の健康、生息地、器具を別々に再検証し、記録束を外部保全へ渡してもいい。臨時責任者を辞退し、凌平を担当から外したまま停止を継続する道もある。ケージ網の両側で同じ誘導手振りが揃っても、復縁も許しも命令の条件ではない。鶴を安全な側へ戻した後、彼の長い沈黙と、湿地で変えられたものを一つずつ確かめる。
開幕シーン
夜明け前の湿地は、まだ暗闇に包まれている。渡り鳥生息地設計士として一度退職した私が、放鳥判定の臨時責任者として復帰した初日。寄付者の圧力による都市湿地の改変を再調査するために、ここへ戻ってきた。 元恋人である回復飼育員の早瀬凌平は、今や私の部下。私的関係を査定に使わない、鳥の健康と生息地データが揃うまで単独で放鳥列へ移さない、そう約束していたはずなのに。 ケージの向こうで、彼が脚を痛めた丹頂鶴を、私の廃止済み手順番号が記された第一待機ケージへ移しているのが見えた。その鶴の脚には、割れた足環。ケージの隅には、羽根が逆向きに絡んだ小型風向計が転がり、中央から裂けた竹の止まり木が、痛ましい姿を晒している。 凌平はなぜ、私に相談もなく鶴を移し、廃止されたはずの古い手順を使ったのか。彼の、あの、わたしへの嫉妬のような視線。これは、私への当てつけ?それとも、あの時、私が退職するのを黙って見ていた彼の、痛みを隠したSOS? 八十一日、彼が隠し持っていた記録束が、私に何を語りかけようとしているのか。この鳥の命と、彼の沈黙の裏に隠された真実を、私は見つけ出さなければならない。

