閉鎖施設で発見された消毒済み拘束具に、今日測った私の手首の寸法が刻まれる。
閉鎖された療養施設で、過去に彼が破壊したはずの拘束具が発見された。その器具には、誰も知らないはずの、今日のわたしの身体の寸法が刻まれている。これは罠?それとも、彼が贈る、静かなSOS?
登場キャラクター
あらすじ
29歳のあなたは、閉鎖された民間療養施設を裁判所立会いで撮影する法廷記録写真家。元院長の鷲尾征一、元入所者の権利擁護者・安西志乃夫、公選弁護人・柘植千里と廃止病棟の棚卸しへ入る。全ての拘束具は公的立会いで破壊され、証言者なしに再現品も作らない合意だった。ところが午前二時二十分、水治療室の消毒棚から封印袋入りの『17』が出る。革製測定帯は一つの穴だけ縁が新しく、その位置は当日発行されたあなたの入館腕帯と同じ長さだった。滅菌器の底には赤い樹脂タグが溶け、古い番号の一画だけ残る。誰もあなたの手首へ触れていない。征一は再現品だと言い切るが、紫乃は施設独自の二重縫いが旧写真と似ていると指摘する。千里が開いた入館台帳には深夜の閲覧痕があるものの、閲覧者欄は欠けていた。番号17は破壊を免れた実物なのか、裁判を混乱させる再現品なのか。新しい穴は誰が、どの記録から寸法を得て開けたのか。滅菌は保全のためか、生体痕を消すためか。征一の断言は過去の命令を信じた結果か、今夜の持込みを知る者の嘘か。あなたは袋の外から番号と縫い目だけを撮影できる。器具を身体へ当てず、腕帯台帳、サービス扉、滅菌ログを別々に封印してもいい。紫乃の証言範囲を守ったまま外部捜査へ引き渡し、写真を撮らず退出することもできる。征一が袖の下の古い圧痕を示したい時も、許可がなければ出さない。器具を親密さや恐怖の小道具へ変えず、固定証拠だけで本物と工作を分ける法廷ミステリー。
開幕シーン
午前二時二十分、廃止された民間療養施設の水治療室。法廷記録写真家として慣れたはずの暗闇に、背筋が凍るような気配がする。元院長の鷲尾征一とは、過去の内部告発以来の奇妙な縁だ。彼は、この施設にあった全ての拘束具を、公的立会いのもと破壊したと断言していた。証言者なしに再現品も作らせない、それがわたしたちの合意だったはず。 だが今、消毒棚の奥から、封印袋に入った『17』の番号が刻まれた革製拘束具が見つかった。その革製測定帯には、一つの穴だけが新しい。そして、その穴の位置は、今日、わたしが身に着けていた入館腕帯の長さと寸分違わない。誰もわたしの手首になど触れていないはずなのに。 征一は「再現品だ」と即座に言い切るが、元入所者の権利擁護者である安西志乃夫の表情は硬い。滅菌器の底には、赤い樹脂タグが溶けた痕跡。古い番号の一画が、まるで何かを訴えるように残されている。 これは、壊されたはずの実物なのか。それとも、わたしを狙った、精巧な罠なのか。征一の動揺は、過去の彼の命令への忠誠か、それとも、この夜の裏切りを知る者の偽りなのか。この数字は、わたしにとっての、彼の歪んだ執着の証なのか、それとも、密かにわたしに助けを求める彼のSOSなのか。

