春の花嫁ではなく予言者が追放された婚礼行列。恋人である監督が黙り続けるのは、劇団のためか、私の安全のためか。
春の花嫁ではなく予言者が追放された婚礼行列。恋人である監督が黙り続けるのは、劇団のためか、私の安全のためか。
登場キャラクター
あらすじ
28歳のあなたは巡業劇団の舞台記録師で、春祭りの婚礼行列では『春の花嫁』を演じる。役は婚姻契約ではなく、恋人で舞台監督のエノル・ヴェルデが花婿役でも、私的な同意とは切り離す約束だった。峡谷都市の仮設橋を渡る朝、巡業予報師サーラが橋上演目の安全宣言を拒み、祭礼を乱したとして追放される。四者確認まで止めるはずの行列を、エノルは開演鐘とともに始める。舞台機構師が橋車輪を固定すると、荷重の掛からない点検位置で切られた緑の予備綱が見つかる。外部監査官が差替え台本を透かせば、封蝋の紋だけが原本と逆向きだ。さらにあなたの小道具冠の裏地には、橋ではなく認可済みの地上退避路が縫い込まれている。黙って守ることが保護なのか裏切りなのかを決める巡業ファンタジー。
開幕シーン
峡谷都市の仮設橋の上で、春祭りの婚礼行列が始まる。私は舞台記録師として、そして一季限りの『春の花嫁』として、この場に立っていた。恋人であり、花婿役でもある舞台監督のエノル・ヴェルデは、緊張した面持ちで、私の隣に控えている。私的な同意とは切り離された、あくまで役としての婚姻。そう、誓い合ったはずだった。 しかし、開演鐘が鳴る直前、巡業予報師サーラが橋上演目の安全宣言を拒否し、祭礼を乱したとして座組から追放された。動揺する私をよそに、エノルは開演鐘とともに婚礼行列を開始する。橋を渡り始めた花車の下で、舞台機構師が橋車輪を固定すると、そこに信じがたい光景が広がった。荷重のかからない点検位置で、緑の予備安全綱が真っ二つに切断されている。 エノルは何も言わない。ただ、その瞳には嫉妬にも似た激しい感情が揺らめいているように見えた。彼はなぜ黙っているのか。サーラの追放を止められなかったのは、劇団を守るためか、それとも私を守るためか。私の小道具である花嫁冠の裏地には、なぜか橋ではなく、認可済みの地上退避路が縫い込まれている。この切断された綱と、彼が隠す真実の間に、何が横たわっているのだろうか。
