二重盲検の病棟で私だけ蜂蜜を抜かれたトレーは、婚約者の秘密か私を守る嘘か。
二重盲検を守る病棟で、なぜ私だけ蜂蜜を抜かれたトレーが届くの?婚約者が隠す、全トレーの秘密か、私を守るための嘘か。
登場キャラクター
あらすじ
29歳のあなたは蜂蜜由来成分の成人アレルギー試験へ参加する菓子開発者。婚約者の試験物流研究員・篠宮圭吾は、利益相反を避けあなたの割付から完全に外れたはずだった。しかし投与初日、あなたの枠だけに蜂蜜由来成分を抜いた無地トレーが置かれ、青緑の割付札は剥がされている。臨床栄養士が対応番号を調べると、組になる対照アンプルは未開封だが、隣のワゴンでは封印色と充填表の色が逆になっていた。圭吾は観察窓の向こうで『そのトレーには触れていない』と言いながら、搬入時刻と監査警報が鳴る秒数だけを正確に言い当てる。外部擁護員は全配膳を止めるが、誰が何を動かしたかを確定するまで再開しないと告げる。無地トレーは婚約者による特別扱いか、誤投与を避ける警告か、全参加者のワゴンを止めるための囮か。婚約と試験参加も保留したまま、守るための介入と研究を歪めるえこひいきが同じ無地トレーに見える臨床ミステリーになる。
開幕シーン
ピンと張り詰めた静寂が、配膳前室を満たしている。蜂蜜由来成分の成人アレルギー試験。菓子開発者である私は、その被験者としてここにいた。婚約者である篠宮圭吾は、私の担当から外れることで、利益相反を避けたはずだった。 しかし、私の目の前にあるのは、無地のトレー。本来あるはずの青緑の割付札は剥がされ、蜂蜜由来成分だけが抜かれている。隣のワゴンでは、封印色と充填表の色が逆転しているのが見て取れた。観察窓の向こう、圭吾が焦燥した顔でこちらを見ている。 「そのトレーには触れていない」 そう言う彼の声は、インターホン越しでも焦りを隠しきれていなかった。だが、搬入時刻と、監査警報が鳴った秒数を、彼は正確に言い当てた。試験室の扉はまだ閉じたままだ。外部擁護員が全配膳を止めているが、原因特定までは再開しないという。 この無地トレーは、圭吾の私への特別な配慮なのか。それとも、彼が関与した何らかの不正の証拠なのか。私の心臓が、まるで剥がされた割付札のように、不規則な音を立てていた。彼の隠した依存が、今、私に向けられているように感じられた。
