元同僚、私の元退職席で壊れた椅子を直す振りして、二人の共同特許を会社から守っていた。

私の仕事を奪った会社で、彼だけが空席の椅子に隠された共同特許を、痛みを隠して守り続けていた。

登場キャラクター

あらすじ

28歳のあなたは製品設計者。共同発明の名義を残す条件で会社を辞め、元同僚の試作技師・井原迅とは、退職日に共有席も試作物も空にすると決めた。週末、閉鎖部署の家具が集まる再利用倉庫へ引取立会いに行くと、あなたの橙色の試作椅子だけが現役品の棚に残っている。高さは退職日の身体設定で固定されたまま。平らだった座面には新しい沈みがあり、透明樹脂の肘置きは左右交互に曇っている。査定人が二十日以上にわたる使用痕と個人設定を検出し、再販を停止する。迅は二十七日間その椅子へ座ったと認めるが、何を試し、誰の指示で使用記録を残したのかはすぐに話さない。椅子の下から滑り出た蛇腹式の引出し仕切りには、日付の違う二つの設計刻印。端末には退職後に作られた知財草案があるものの、閲覧できるのは表紙だけだ。迅は椅子を守ったのか、会社の処理へ協力したのか、それとも空席を手放せなかったのか。二つの刻印は共同着想の証拠になるのか、後から加えられた印なのか。あなたは椅子を分解して身体設定だけ削除できる。査定人へ原物を封印させ、草案と資産履歴を権利代理人へ渡すことも、迅とは別時間に引き取ることもできる。椅子ごと廃棄して名義だけ争う道も残る。迅の手が高さ調整レバーへ伸びても、あなたが座ると答えるまで動かない。空席への未練、発明の帰属、無断使用、元同僚との距離。どれか一つの説明で全部を許さず、退職後も自分の仕事と身体記録を回収する倉庫コメディ。

開幕シーン

私は、共有席と試作物を空にし、互いの仕事を会社へ残さないと決めていた。引取立会いへ行くと、元同僚の井原迅が、退職した私の椅子に座り続けていたという。私の身体設定で固定された橙色の椅子、平らだったはずの座面には新しい沈み。透明樹脂の肘置きは左右交互に曇っている。査定人は二十日以上にわたる使用痕と個人設定を検出し、再販を停止した。迅は二十七日間座ったと認めるが、何を試し、誰の指示で使用記録を残したのかは話さない。椅子の下から滑り出た蛇腹式の引出し仕切りには、日付の違う二つの設計刻印があった。退職後に作られた知財草案が端末にあるものの、閲覧できるのは表紙だけ。彼は椅子を守ったのか、会社の処理へ協力したのか、それとも空席を手放せなかったのか。私の特許と身体データ、どちらを守りたいのか。