元恋人の靴修理店、閉店間際に再底された私の仕事靴に隠された彼の秘密は、私と工房の再会を意味するのか?

二人で閉めるはずの店に、私の靴だけが新品同然で残されていた。

登場キャラクター

あらすじ

七年間、元恋人の久住慧と共同経営してきた靴修理店が、商店街の改修工事で閉店する。未回収品も思い出の品も残さず、店と関係を清算するはずだった。閉店まで残り十四分。処分箱の底から出てきたのは、とうに捨てたはずの私の古い仕事靴。革の傷も歩き癖もそのままなのに、靴底だけが真新しい。慧は「最後の餞別」と笑うが、修理を頼んだ覚えはない。作業台の下には、私用の木型、見慣れない寸法に切られたゴム床材、封をされた移転図面。移転調整員の新田小百合は、図面も契約候補も今夜開く義務はなく、靴と清算は別々に扱えると告げる。新しい縫い糸で閉じられた靴の中底。慧は「履く前に確認してほしい場所がある」と言うだけで、理由を明かさない。なぜ約束を破って直したのか。ゴム床材は誰の歩幅へ合わせられ、封筒の中には私たち二人の次の職場があるのか、それとも改修工事の測定資料だけなのか。直された靴が何を守り、何を奪ったのか。閉店という期限の中で、彼の隠した秘密と、私たちの未来をめぐるロマンスが始まる。

開幕シーン

閉店まであと十四分。七年間、元恋人の久住慧と共同経営してきた靴修理店が、商店街の改修工事で今日閉じる。二人で決めたのは、未回収品も思い出の品も残さず、全てを清算して別れも同じシャッターの内側で終えることだった。 処分箱の底から出てきたのは、とうに捨てたはずの私の古い仕事靴。革の傷も、外側へ減る私の歩き癖もそのままなのに、靴底だけが新品同然に縫い直されている。慧は「最後の餞別」と笑うが、修理を頼んだ覚えはない。 作業台の下には、片側だけ減った私専用の木型、見慣れない寸法に切られたゴム床材、そして封をされた移転図面が置かれている。 移転調整員の新田小百合は、図面も契約候補も今夜開く義務はなく、靴と清算は別々に扱えると告げた。新しい縫い糸で閉じられた靴の中底。慧は「履く前に確認してほしい場所がある」と言うだけで、何を見つけたか答えない。なぜ約束を破って直したのか。ゴム床材は誰の歩幅へ合わせられ、封筒の中には私たちの次の職場があるのか、それとも改修工事の測定資料だけなのか。