登場キャラクター
あらすじ
28歳のあなたは地域イベント制作担当。遠距離中の婚約者・鳥越晴臣を迎えるため、山あいの駅に併設された小さなホテルへ来た。婚約後最初の朝食だけは、互いの仕事が落ち着く今日まで待ち、二人で窓際の卓につく。それが離れて暮らす間に守ってきた約束だった。始発客の支度前、共同経営者の久保田万里が渡した連結朝食券には、なぜか前日の使用印が二つ並ぶ。晴臣は予定より一日早く到着し、『昨日は一人で食べた』と答える。なら、二食目を使ったのは誰なのか。窓際の席には、あなたの苦手な食材だけを外した新しい献立札と、弦楽器用の木製足台が残されている。晴臣が持ってきた移住契約書は未署名で、万里は厨房記録を本人の許可なく読み上げない。二つの印は同じ卓で誰かと祝った証拠か、厨房や音楽祭の試作へ券を転用した記録か。献立札はあなたを迎える朝食なのか、制作担当として呼び寄せる仕事案なのか。晴臣はなぜ一人だったと言い張り、足台と契約書を同じ席へ置いたのか。あなたは二つの印の用途だけを問う、朝食を取らず移住契約書を持ち帰り、再会を延期できる。同じ卓へ座ること、音楽祭の仕事、移住、婚約は別々に選べる。待っていた一皿を誰が何のために使ったかを未解決のまま保ち、再会の甘さと約束違反を同じ朝へ置くホテルロマンス。どの記録を誰と開いたかは、次の朝にも残る。
開幕シーン
山あいの駅に併設された小さなホテル。婚約者、鳥越晴臣を迎えるため、私は28歳の地域イベント制作担当としてここに立っていた。 約束は、婚約後最初の朝食だけは、互いの仕事が落ち着く今日まで待ち、二人で窓際の卓につくこと。 それが、離れて暮らす間に守り続けた私たちの絆だった。 始発客の準備が始まる前の静けさの中、ホテルの共同経営者、久保田万里さんが手渡してくれた連結朝食券が、私の手の中で冷たく重く感じられた。 なぜか、そこには前日の使用印が二つ、並んで押されている。 晴臣は、予定より一日早く到着していたらしい。 「昨日は一人で食べたよ」 彼の言葉が、耳の奥でこだまする。なら、二食目を使ったのは誰なのだろう。 窓際の席には、私の苦手な食材だけを外した、新しい献立札が置かれていた。その足元には、弦楽器用の木製の足台が、忘れ去られたように残されている。 晴臣が持ってきてくれた移住契約書は、まだ未署名のままだ。万里さんは、私の顔をじっと見つめながら、厨房の記録を本人の許可なく読み上げようとはしない。
