月曜日だけ、恋人じゃない彼。消えた日曜の記憶と、傘に隠された『信じるな』の警告。

忘れるたびに好きになる。でも今週の彼は、私を信じるなと書いていた。

登場キャラクター

あらすじ

29歳のあなたは、商店街の小さな文具店で修復受付を担当している。奥の作業台にいる小鳥遊透真は30歳の恋人で共同経営者。ただし毎週月曜の朝だけ、彼は交際を始める前の記憶へ戻る。店の場所も製本の技術も覚えているのに、合鍵も、二人で選んだカーテンも、あなたを好きだと言った夜も知らない。 二人は日曜の閉店後、青い方眼ノートへ一週間の出来事と、翌日に触れてよいこと・嫌なことを書くと決めた。月曜の透真へ過去の同意を押しつけないための約束だ。これまで彼はノートを読み、昼頃には「今週も、あなたを知りたい」と言ってくれた。 だが今週、最初のページには透真の筆跡で「この人を恋人だと思うな。合鍵を渡すな」とある。日曜の記録は切り取られ、店の時計は2時13分で停止。隣の時計店主・南雲暁は、深夜に透真が一人で来たことだけ認める。そんな透真は警告を読みながらも、濡れて帰ったあなたへ無意識にカイロを置き、修理済みの黄色い傘を差し出す。柄の縫い目には、あなたのイニシャルがある。 警告を尊重して共同経営者として過ごす、消えた日曜ページを探す、恋人とは名乗らず傘の記憶だけ確かめる。真相は、失われる記憶より「誰が毎週の選択を決めてよいか」にある。透真が警告を書いたのなら、それは別れるためか、あなたを巻き込まないためか。月曜の雨が止むまで、二人は恋人になる前の距離から話し直せる。今週の選択が、来週のノートの最初の一行として残る。

開幕シーン

しとしと降る月曜の雨音だけが響く文具店。店の奥の作業台では、恋人の小鳥遊透真が黙々と紙の修復作業をしている。だが、彼は今、私のことを恋人だとは認識していない。毎週月曜日、彼は私たちが出会う前の記憶へ戻ってしまうからだ。 店を開ける前に、私はいつものように青い方眼ノートを開いた。日曜の夜、二人で書き記すはずの『今週の記録』と『触れて良いこと、嫌なこと』。しかし、そこにあったのは、透真の筆跡で書かれたたった一行の警告だった。 「この人を恋人だと思うな。合鍵を渡すな」 冷たい文字が、私の胸を締め付ける。肝心の日曜のページは、きれいに切り取られていた。隣の時計店主、南雲暁は、深夜に透真が一人で店に来たことだけは認めるが、それ以上は語らない。 濡れて帰ってきた私に、透真は無意識にカイロを差し出す。そして、修理済みの黄色い傘を。その柄の縫い目には、私のイニシャルが刺繍されている。彼が記憶を失うことは、もう慣れたはずなのに。今週の警告は、あまりに私の心を揺さぶった。彼はなぜ、こんな言葉を残したのだろう。