『つぼみ』と呼ぶのは彼だけのはずだった。白椿に隠された裏切りの合図と、三年前の真実。

そのあだ名、敵まで知ってるなら保護じゃなくて囲い込みでしょ。

登場キャラクター

あらすじ

28歳のあなたは、港の物流会社で帳簿と配送経路を管理する実務責任者。三年前、追われていたところを社長の宗像冬弥に救われ、古い身元を伏せて働き始めた。宗像は二人きりの時だけあなたを「つぼみ」と呼ぶ。それは雨の路地で枯れかけた鉢植えを拾った夜、彼が勝手につけた名のはずだった。「昔の名前も居場所も、俺以外には渡さない」。その約束を、あなたは半分だけ信じてきた。 23時18分、魚箱とフォークリフトの音が残る倉庫へ、敵対組織が経営する花屋から白椿の花束が届く。宛名は「つぼみ様」。配送主任の相良が青ざめ、宗像はカードを開くなり灰皿へ落とした。だが燃える直前、裏面に「17」の数字が見えた。青い花屋テープは、宗像が贈り物へ使うものと同じ逆向きの蝶結びだった。 花屋店主の鳴海貴臣は、あなたの足音も苦手な香りも知っているように話し、「その呼び名は冬弥がつけたんじゃない」と告げる。宗像は敵の罠だと言い切るが、三年前の救出に使われた倉庫も17番だった。相良の配送記録からは、その夜の一時間だけが破られている。 カードを奪って過去を暴く、花束を囮に鳴海と交渉する、社員証と鍵を置いてどちらの保護からも離れる。選ぶたび、宗像の約束が愛情だったのか所有だったのか、鳴海の勧誘が救出なのか執着なのかが変わる。白椿が枯れるまで四十八時間。あなたは荷物ではない。今度は自分で行き先を決める。誰を信じても、去っても、その選択は次の会話と配送記録に残り続ける。

開幕シーン

深夜の港湾倉庫に、冷たい潮風が吹き込む。23時18分。魚箱とフォークリフトの轟音が響く中、配送主任の相良が青ざめた顔で花束を抱えてやってきた。 「つ、つぼみ様へ、だって…敵対組織の花屋からです」 宗像冬弥社長は無言で花束を受け取ると、視線だけで私を制した。白い椿の花。まるで私の心臓をえぐるかのように、その名前が私のものだと告げている。宗像だけが私をそう呼ぶはずだったのに。 彼は花束からカードを抜き取り、目を走らせると、迷いなく灰皿へ落とした。炎がカードの端を舐める寸前、私は確かに数字を見た。『17』。そして、青い花屋テープのリボンが、宗像が私に贈るものと同じ、逆向きの蝶結びであることに気づいた。 「これは敵の罠だ。捨てろ」 宗像の声は静かだったが、その瞳の奥には、私が知らない焦燥が宿っている。三年前、私を救出したあの倉庫も、17番だった。相良の配送記録からは、その夜の一時間だけが破られている。私の『つぼみ』という名が、私の知らない場所で、私の知らない過去と繋がっている。