登場キャラクター
あらすじ
30歳のあなたは、七年前に同居初日をすっぽかした元恋人・柊木航平と話すため、地元の同窓会へ戻る。二十三歳の別れ際、航平は「次に会うなら、他人に言わせず自分の口で理由を話す」と約束し、今回の店と日時も彼が指定した。ところが二階の座敷には、航平の名札だけが伏せられている。幹事の郡司直哉は「町営バスの故障で残業」、薬剤師の水野奈緒は「熱があり薬局から帰した」、配車係の御子柴廉は「事故の聞き取りで警察にいる」と、同じ夜について別々の場所を答える。誰が最後に本人を見たか尋ねると、三人の時刻も語尾も急に曖昧になる。直後、閉店中の一階厨房から注文票が出て、「ジンジャーエール・氷なし ヒイラギ」と現在時刻が印字された。インターホンの向こうから聞こえたのは、七年ぶりの航平の声。彼は店内にいることだけを認め、顔を見せる前に三人の話をどう聞くか決めてほしいと言う。直哉の青い裏口鍵、奈緒の薬局の紙コップ、廉の車に残る濡れたタオルは、それぞれの説明の一部を支えるのに、一つの時系列にはまだ並ばない。三つの理由はすべて事実なのか、誰かが航平の代わりに足した嘘なのか。なぜ彼は七年前と同じ夜に、また天井一枚の向こうへ隠れたのか。あなたはインターホン越しに時刻だけを確認し、全員を別々に話させられる。航平を二階へ呼ぶ、第三者同席の次回だけ決めて今夜は帰る、説明そのものを拒むこともできる。航平との復縁、廉の待っていた気持ち、友人四人との関係は、欠席理由の答えと切り分けて選べる。空席へ座る人を決めるのは、彼らの善意ではなくあなたである。
開幕シーン
七年ぶりの同窓会。指定された居酒屋の座敷へ入ると、私と元恋人・柊木航平のために空けられた席が、そこだけ不自然に広く感じられた。二十三歳の別れ際、彼は「次に会うなら、他人に言わせず自分の口で理由を話す」と約束した。だから、今回こそ、彼の口からあの失踪の真実が語られるはずだった。 しかし、航平の名札だけが伏せられている。幹事の郡司直哉が気まずそうに「あいつ、町営バスの故障で残業らしいっす」と言う。その直後に薬剤師の水野奈緒が「ううん、熱が出ちゃって、私、薬局から帰したけど」と続く。さらに運転代行の御子柴廉が「いや、俺がさっき交番からここまで送ったぞ。事故の聞き取りだって」と畳み掛ける。三人の視線が宙を泳ぎ、互いに顔を見合わせる。 誰が最後に航平を見たのか尋ねると、三人の時刻も語尾も急に曖昧になる。彼らを問い詰めようとしたその時、一階の厨房から、ガチャンと音がした。そして、目の前の伝票プリンターから、スルスルと白い紙が吐き出される。そこには「ジンジャーエール・氷なし ヒイラギ」の文字と、現在時刻が印字されていた。航平の、昔からの癖だ。そして、厨房のインターホンが鳴る。 「…もしもし。柊木だけど。今、店の一階にいる。話す前に、俺がなんでここにいるか、三人の誰の話を聞くか、お前が決めてくれ」 七年ぶりの、航平の声。彼は店内にいることだけを認め、顔を見せる前に私の選択を求めている。直哉の青い裏口鍵、奈緒の薬局の紙コップ、廉の車に残る濡れたタオル。それぞれの説明の一部を支える物証は、一つの時系列にはまだ並ばない。三つの理由はすべて本当なのか、それとも誰かが航平をかばうために足した嘘なのか。なぜ彼は七年前と同じ夜に、また天井一枚の向こうへ隠れたのだろう。

